2007年4月の小笠原村議会議員選挙で当選した議員の平均年齢は60.8才です。最年少の私で35才。次に若い議員は私よりも22才年上の57才です。小笠原村は若者世代や子どもが多い村なのに、住民のバランスと議会のバランスが不釣り合いなため、村政の偏りを生み出す原因になっていると思います。若い世代の皆さんが村の政治に参加して、より良い村づくりを共に推進していきましょう!
 しかし実際問題、この村で地縁血縁、土地、お金、実績もほとんどない若い世代が選挙に当選することは、色々と難しい面もあります。これらの課題を整理して、困難な状況にどのように対処したらよいのか?私なりの考えをまとめました。今後、若い世代の皆さんが政治に参加しやすくすることも、若い世代で議員にならせて頂いた私の責任だと考えています。

 

議会議員になるメリット 解説
一人称で村づくりに参加できる  選挙のやり方によっては後援会や支持者の意向に左右される場合もありますが、基本的に議員は議員個人の意見で村づくりに参加できます。「私は・・・だと思うから・・・・した方がいい」という意見を村にぶつけることができます。村が実施する基本的な事項は、すべて議会の議決を得なければいけないので、当然大きな力を持つことができます。
多くの人と知り合うことができる  選挙をするので、当然顔が広くなります。より多くの村民と語り合う機会が増えます。
政治のプロとして収入を得ることができる  議員の身分は特別職の非常勤地方公務員です。年齢制限もありませんし、よほどの悪いことをしない限り辞めさせられることもありません。年収は約270万円です。以前は議員年金がありましたが、今は廃止されています。私は国民年金に加入しています。
身分が保障される
   
若き村議会議員へのハードル 解説
家族の理解と同意が必要  村議会議員になることは役所的には就職と見なされるので、転職をしなければなりません。現在勤めている会社があれば、辞めなければ勤まるものではありません。村から補助金をもらっている団体で働いている場合は社会道徳上、辞めなければいけません(私は選挙前に辞めました)。自営業であれば半分以上の時間は議員としての仕事でとられてしまうでしょう。選挙というリスクを伴うのと、生活全体が大きく変わるので、家族の理解と同意が必要です。
村づくりの具体的な政策を持つ  漠然とした政策を持っているだけでは今の議員は勤まりません。若い立候補者はマニュフェストで判断される傾向にあります。漠然とした政策では選挙に当選しません。例えば、「福祉を良くします」と訴えても有権者の心には響きません。福祉の何をどう良くしたいのか?財源はどこから持ってくるのか?という自分なりのビジョンを持っていないと説得力に欠けてしまいます。特に財源の裏付けなしに理想論ばかり並べても、議員になってから何も実績を残せません。特にこの島の場合、無党派層の有権者は高学歴な方が多く、理想論ばかり並べてもすぐに見透かされてしまうでしょう。立候補するなら自分の政策をより深く勉強しておく必要があります。
お世話になっている人の理解を得る  狭い島で生活しているので、特に若い世代の場合はがちがちのしがらみの中で生きているようなものです。これまでにお世話になってきた長老、関係団体の長や理事、上司、先輩、友人、後輩などに、立候補する意志と村づくりのビジョンを理解してもらう必要があります。これを怠ると例え議員になれたとしても、活動しにくくなってしまうでしょう。一言の挨拶のあるなしが、その後の選挙活動、政治活動に大きな影響を与えます。
生活していく基礎をつくる  身分が保障されているとは言え、議員の報酬は月に14万円程度。年収270万円です。小笠原村の場合、政務活動費は全く支給されないので、政治活動費は公務以外は自腹です。そのため、家族がいればこの報酬額では生活できません。議員活動と政治活動をやりながらもプラス数百万円を稼げる術を身につけていないといけません。サラリーマンをやりながらは、社長の理解がない限りはほぼ不可能です。自営業だと村からの受託が一切できなくなります。国や東京都からの受託事業は受けられます。公務がおが丸入港中にある場合も多いので、観光業を営んでいる場合は大変かと思います。都営住宅に住んでいて奥さんに働いてもらい年間100万円程度稼いでもらえば、生活していけるかもしれません。しかし、議員になると家族にとってそれだけで大きな負担になるので、なるべく自らが稼げる手段を見つけるのが理想です。この課題をクリアーするのは大変困難だと思いますが、知恵と努力でクリアーしてください。私の場合、島の資源と私自身の専門性(水産学)を活用した販売業と、観光業を事業として立ち上げ、この課題をクリアーしました。議員報酬を増加させるのは他の市町村との兼ね合いもあり、国に働きかけない限りほぼ不可能です。
選挙に当選する  従来の選挙活動にとらわれることは全くありません。全国的な流れとして選挙カーを使わない、名前を連呼しない選挙がブームになりつつあります。あるアンケート結果によると、「連呼行為は逆効果である」と答えている国民は75%にも及びます。電話による投票依頼も一切行わない若い立候補者も多くいます。私も一切しませんでした。しかし、選挙をするからには票を入れてもらえるような活動をしなければいけません。有権者が若い世代に期待していることは、政策立案能力と行動力です。この2つを有権者に理解してもらうための手段は大きく分けて二通りあります。1つは無党派層に訴えること。もう一つは支持基盤を作ってその組織を広げていくことです。選挙で無党派層に訴えることはたやすいのですが、他の候補者もターゲットにしているので、他の候補者よりも数段目立つことがあれば無党派層だけにターゲットを絞って選挙戦を戦えば良いかと思います。小笠原の場合、無党派層は若者世代、公務員(国と東京都)、主婦業の方々です。今回の選挙では私はこの無党派層を中心に支持を訴えました。
 支持基盤を作ってその組織を広げるのは、若い世代で新島民の場合は相当難しいと思いますが、ぜひチャレンジしてみて下さい。選挙戦の半年ー1年前くらいから東京都選挙管理委員会に申請して政治団体を作り、草の根活動として会員を増やしていく手法です。ただ、難しいのはこの島の若者世代のほとんどはしがらみの中にあるということです。表立って若い世代の立候補者に賛成してくれる若い人は、意外に少ないものです。影響力のある長老に政治団体の会長になってもらい、若者世代を取り込んでいく手法が良いでしょう。そうすれば票を固めることができると思います。ただしこの場合、当選してもその長老や組織に束縛されてしまう可能性があります。無党派層に訴える場合、票を固めることができない代わりに、組織に束縛されないメリットがあります。一番やってはいけないのは、無党派層と組織の両方をターゲットにすることです。実績がほとんどない若い世代の立候補者が中途半端なスタンスだと、どちらの支持も得ることができないでしょう。あなたはどちらを選びますか?
 ここまで選挙のテクニック的な話をしてきましたが、若い世代で一番大事なのはより良い村づくりをしたいという熱意です。この熱意が有権者に伝われば当選するはずです。有権者は良識者です。見聞きしていないようで、横目でしっかり見ているのが有権者です。地縁血縁などのしがらみを崩すのも、あなたの熱意次第です。選挙のテクニックが格段に優れていても、熱意が足りなければ落選してしまいます。逆に選挙のテクニックが多少下手でも、熱意があればテクニックをカバーしてくれます。若者らしく熱意を持って選挙戦に備えてください。
 
*参考文献
 上記文章&私の選挙戦は下記の本を参考にしました。この本の通りに選挙戦を闘いました。立候補を目指す若い世代の方はぜひ一読してみてください。
「あなたもなれる!市議会議員」 五十嵐佳子・小石川百合著 バジリコ株式会社


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